1980 年 12 巻 12 号 p. 1451-1457
先天性心疾患のうちで,左室右房交通症は比較的まれな心奇形とされているが,心室中隔欠損症を合併した症例はさらに少ないとされている.また術前に診断されないことも多い.われわれは,最近,心臓カテーテルおよび左室造影にて確定診断した症例の根治術を経験した.
症例は5歳男児で,主訴は心拡大および心雑音である.心雑音は,胸骨左縁第IV-V肋間から心窩部にかけてのLevine IV/VI度の粗い収縮期雑音を,および胸骨右縁第III~IV時間にてIII/VI度の同様な収縮期雑音を聴取した.右心カテーテルで,右房および右室で有意の酸素飽和度の上昇を認めた.左室造影で,右房および右室に向かう2条のshunt jet重を認めた.術前診断は左室右房交通症兼心室中隔欠損症であった.術中,右房下部および右室前壁の2ケ所にスリルを感じ,心内にて診断を確かめた.左室右房交通症をパッチ縫合,心室中隔欠損症を直接縫合にて閉鎖した.