1978 年 10 巻 8 号 p. 822-826
3歳7ヵ月の女児で巨大な筋性部心室中隔欠損に膜性部小欠損を合併した症例を経験した.筋性部中隔欠損の診断には術前の左室造影が重要で,術中においては色素液左室注入による欠損孔の部位判定法が有用である.
本症例はPp/Ps=O.96,Rp/Rs=0.75の重症肺高血圧症を合併しており,術前の肺生検ではHeath-EdwardsII度の血管病変を示していた.手術を施行したが,術後右心不全が存続し,5ヵ月目に死亡した.剖検にて判明した肺気腫病変が術後右心不全の管理をさらに困難なものにしていたと思われた.重症肺高血圧症を合併した心室中隔欠損の手術成績の評価と予後の判定にさいし,肺血管病変とともに肺胞壁の変化も重視されなくてはならないことが示唆された貴重な症例であった.従来の手術適応の他に術前の肺生検の必要性もあわせて強調した.