心臓
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[症例]
モービルcardiac care unitによるECPELLA使用例の搬送
山田 めぐみ樋口 亮介小林 敦井口 信雄高山 守正大竹 俊良波多江 遵山形 泰士三浦 真由子池亀 俊美磯部 光章
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2021 年 53 巻 6 号 p. 615-621

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抄録

 補助循環装置を装着した患者の搬送は一つのトラブルが生命の危機に直結しうるため容易ではない.症例は21歳男性,拡張型心筋症による急性心不全のために前医に入院した.内服治療が開始となったが効果が不十分であり当院に転院となった.入院時点で肝腎機能障害を伴う心原性ショックであったため,強心薬の持続投与を開始した.その後もショックから離脱することはできず,Impellaおよび経皮的心肺補助装置(venoarterial-extracorporeal membrane oxygenation)によるECPELLA療法を開始した.臨床状況から補助人工心臓および心臓移植の適応と判断し,モービルcardiac care unit(MCCU)にて心臓移植実施施設へ転院搬送することとした.搬送にあたり,MCCUまでの移動方法,車内での医療機器の配置・電源・トラブル対策,患者急変および交通渋滞時の対応をシミュレーションした.搬送を行う医療スタッフは医師2名,看護師,臨床工学技士,運転手,そして事務員の6名とした.搬送当日は晴れ,渋滞はなく,23 kmの道のりを44分で搬送した.搬送先到着後,集中治療室まで患者を移送し引き継ぎを行った.経過中に臨床状態の悪化や医療機器のトラブルはなかった.補助循環装置使用例,特にImpellaの承認に伴うECPELLAを使用した症例の搬送の増加が予想されるが,その報告は少ない.重症患者管理,補助循環装置そして救急患者搬送に習熟した医療スタッフによる綿密な事前計画と搬送が重要である.

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