2020 年 52 巻 12 号 p. 1415-1420
症例は75歳男性.突然の一過性意識消失とその後の呼吸困難で救急搬送された.精査の結果,下肢深部静脈血栓症が原因の急性肺動脈塞栓症と診断された.さらに右房内に巨大浮遊血栓を指摘されたため準緊急的に開胸下での血栓摘出術を行った.右房内浮遊血症は重症の急性肺塞栓症を引き起こす原因となるため発見され次第緊急で対応する必要がある.しかしながら早期診断の技術が向上した現在においても,その管理,治療については一定の見解が得られていない.本症例は右房内の巨大浮遊血栓に加え,開存した卵円孔から右房内の血栓が左房内にも浮遊性に存在する状態であった.肺塞栓症の再発に加え,動脈塞栓症の発生も危惧されたため外科的血栓摘出術を選択し,術後合併症なく治療を行うことができた1例である.