心臓
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[症例]
心アミロイドーシスの合併により,体表面心電図からの診断が困難であった通常型心房粗動の1例
渡邉 隆大永嶋 孝一奥村 恭男渡辺 一郎磯 一貴高橋 啓子新井 将水谷 博明黒川 早矢香大久保 公恵中井 俊子平山 篤志
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2018 年 50 巻 4 号 p. 397-404

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抄録

 心アミロイドーシスは不整脈や刺激伝導系障害を合併することが知られている.我々は,心アミロイドーシスの合併により,体表面心電図から診断が困難であった心房粗動(AFL)の1例を経験した.心臓電気生理学検査で2種類の心房頻拍(AT)が誘発された.AT1(頻拍周期[TCL]:330 ms)のP波は下壁誘導で弱陰性/陽性の2相性,V1誘導で陽性/陰性のP波であった.心内電位で,AT1は三尖弁輪を反時計方向に旋回しており,三尖弁下大静脈間峡部(CTI)から冠静脈洞(coronary sinus;CS)入口部間での著明な伝導遅延後にCSを近位から遠位へ伝播していた.CTIでのentrainment pacingでpost pacing interval(PPI)がTCLと一致したため,反時計方向回転型通常型AFLと診断した.AT2(TCL:320 ms)のP波は,下壁誘導で陰性/弱陽性,V1誘導で陽性/陰性のP波を認めた.心内では三尖弁輪を時計回転に旋回している時計方向回転型通常型AFLと診断した.CTIに線状焼灼を行い,以後いかなるATも誘発不能となった.なお洞調律下での右房のvoltage mapで右房後壁に広範囲に低電位領域,MRIで心房中隔に遅延造影(late gadolinium enhancement;LGE)が認められることが体表面心電図での診断を困難にしていたことが推察された.

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