2015 年 47 巻 9 号 p. 1100-1106
症例は49歳女性. X-6年に混合性結合組織病 (MCTD) と診断された. X-1年7月に経胸壁心エコー図検査で三尖弁逆流圧較差48mmHgを指摘された. フロセミドで加療されていたが増悪傾向でありX年7月に当院紹介入院となった. 右心カテーテル検査で肺動脈圧 (PAP) 65/25 (43) mmHg, 肺動脈楔入圧5mmHgであり, 他の画像診断と併せて肺動脈性肺高血圧 (PAH) と診断した. 入院3日目からボセンタン125mg/日を開始し, 9日目からシルデナフィル60mg/日を併用開始した. 16日目の右心カテーテル検査でPAP 37/17 (27) mmHgと改善した. 従来, 単剤で十分な治療効果が得られない場合, 逐次PAH治療薬を追加してゆくsequential combination therapyが行われてきた. しかし最近では, 治療初期から複数のPAH治療薬をほぼ時間差なく併用開始するupfront combination therapyも試みられている. MCTDに合併したPAH治療において, ボセンタンとシルデナフィルのupfront combination therapyによって肺動脈圧の改善を認めた1例を経験したので報告する.