心臓
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症例
繰り返すペースメーカー脱落に対し鎖骨固定が有用であった1例
松山 苑子北村 哲也藤井 英太郎大村 崇大森 拓森 拓也浜田 正行伊藤 正明
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2013 年 45 巻 9 号 p. 1155-1159

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抄録

症例は,61歳,男性.受診2カ月前から全身倦怠感が出現した.来院時心拍数29/分の完全房室ブロックを認めDDDペースメーカー移植術を施行した.術後チェックで異常なく,経過良好であったが,術後6日目の立位胸部X線で,ジェネレーターが下方に脱落し,J字型に留置していた心房リードがまっすぐとなっていた.心房・心室の刺激閾値も上昇しており(心房刺激閾値:0.75V→1.5V,心室刺激閾値:0.5V→1.5V),心房・心室両リードのleads dislodgementを疑い,再固定とリードのたわみを十分につけることで対処した.しかし,再手術後3日目に再び心房の刺激閾値が上昇し,立位胸部X線で以前と同様にジェネレーターのmigration(脱落)を認めた.再手術時に固定やリードのたわみは良好であることを確認していたため,繰り返すペースメーカー脱落の原因として,胸壁結合組織の脆弱性を疑い,立位でのジェネレーター脱落を防ぐ目的で,ジェネレーターを鎖骨に吊り下げ固定する手法で再々手術を行った.手技は鎖骨上を小切開し,骨膜を剥離し鎖骨を露出させ,鎖骨に1-0 ETHILONを2本通し,ジェネレーターのsuture holeに通して固定した.再々手術後はジェネレーターの脱落もなく,閾値も良好であった.本症例のように,ジェネレーター本体を鎖骨に固定する手法をとることで,胸壁結合織の性状にかかわらず固定を行うことが可能であり,有効な方法の1つと考えられるため,報告した.

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© 2013 公益財団法人 日本心臓財団
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