心臓
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基礎研究
救急車による重症患者搬送時における電源容量の問題点
伊藤 一貴長尾 強志坪井 宏樹井手 雄一郎鶴山 幸喜速水 良高
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2009 年 41 巻 10 号 p. 1094-1101

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抄録

心臓血管外科が併設されてない地方病院では, 重篤な症例に遭遇した場合には経皮的心肺補助装置(percutanoeous cardiopulmonary support; PCPS)や大動脈内バルーンパンピング(intraaortic balloon pumping; IABP)を装着し救急車で都市部の高次救急病院に搬送することになる. しかし, 標準規格の救急車では車内電源の電流容量は3.0 ampere(A)であるため, 複数の医療機器の使用により容量を超過する. この場合, 電力の再供給が不能になる場合がある. このため, IABPやPCPSの消費電流特性, 内部電池の容量および予備電源の確保について検討した. PCPSの消費電流は起動時に最大の2.3Aになるが, IABPでは充電が低下した状態では3.0Aを超えることがあった. このため, IABPの車内電源による利用には注意が必要と考えられた. PCPSではポンプ回転数に比例して消費電流が増加したが, IABPではパンピングレートやバルーン拡張率の変更による消費電流の変化は軽微であった. 充電された内部電池によりPCPSは約60分, IABPは約120分駆動できた. 人工呼吸器に付属する無停電電源装置を予備電源として応用することにより, PCPSを約60分, IABPを約30分間駆動できた. 無停電電源装置は病棟のセントラルモニターなどにも設置されているため, それらを活用すれば救急搬送に必要な電力を確保できると考えられた. 重症患者を搬送する機会のある施設では, 搬送時間, 使用する医療機器の消費電流特性, 内部電池の容量さらに予備電源についての検討が必要と考えられた.

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© 2009 公益財団法人 日本心臓財団
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