2002 年 44 巻 3 号 p. 684-689
サイトメガロウイルス(CMV)腸炎3例を経験したので報告する.症例1は71歳女性で,硬膜外腫瘍術後に下痢と間歇熱で発症し,下部直腸に全周性の潰瘍とその口側に偽膜様病変を認めた.症例2は51歳男性で,皮膚筋炎の消化管スクリーニングで全大腸に白苔を伴う多発性潰瘍を認め,盲腸では偽膜様病変を呈した.症例3は44歳女性で,悪性リンパ腫の化学療法後に体重減少と下痢で発症し,回腸末端から全大腸にわたる多発性の不整形潰瘍を認めた.全例ともCMV抗原血症陽性で,生検でCMV核内封入体が検出され,ガンシクロビル投与で腸病変が改善した.免疫不全状態では種々の日和見感染症を発症するが,提示症例のような多彩な腸病変を認めた場合はCMV腸炎を念頭に置くべきと考えられた.