日本消化器内視鏡学会雑誌
Online ISSN : 1884-5738
Print ISSN : 0387-1207
ISSN-L : 0387-1207
資料
早期胃癌におけるEpstein-Barrウイルス関連胃癌のリンパ節転移頻度に関する検討
大隅 寛木河内 洋由雄 敏之藤崎 順子
著者情報
ジャーナル フリー HTML

2020 年 62 巻 11 号 p. 2980-2988

詳細
抄録

Epstein-Barrウイルス関連胃癌(EBVGC)は,胃癌全体の約9%を占め,リンパ節転移(LNM)頻度が低いことが報告されている.しかしEBV関連の早期胃癌におけるLNM頻度に関するデータは限られており,EBVステータスは内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)の治療適応及び根治性の基準には取り入れられていない.本総説では早期胃癌におけるEBVGCとリンパ球浸潤胃癌(GCLS)のLNM頻度に焦点を当て,ESDの治療適応及び根治性基準の適応拡大の可能性に関する検討を行った.病理学的粘膜下層浸潤EBVGCではLNM頻度は低く(3.3%(6/180),95%信頼区間[CI]:1.2-7.1),特に脈管侵襲陰性例で低い結果であった(0.9%(1/109)).また病理学的粘膜内EBVGCではLNMを有する症例は認められなかった(0%(0/38),95%CI:0-7.6).一方GCLSのLNM頻度は低い結果であったが(5.0-10.6%),EBV陰性のGCLSにおけるLNM頻度は比較的高い結果であった(10.0-20.0%).従ってLNM頻度を考慮する場合,EBVステータスはGCLSよりも重要な要素であると考えられた.EBVGCの臨床病理学的特徴は一般型の胃癌とは異なり,LNM頻度は有意に低い.このグループはESDの有望な治療対象であると考えられ,早期胃癌のESD治療適応及び根治性の基準にEBVステータスを含めた新たな治療ガイドラインの策定が望まれる.

著者関連情報
© 2020 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
前の記事 次の記事
feedback
Top