2018 年 60 巻 9 号 p. 1572-1578
症例は69歳,女性.経過観察されていた胃底腺ポリポーシス内部に一部に発赤を伴う褪色調の平坦隆起性病変を認め,生検で癌を確認後に胃全摘術を施行した.病変部は胃腺窩上皮型腺腫および同腺癌であった.本症例ではWorthleyらの提唱する遺伝性のgastric adenocarcinoma and proximal polyposis of the stomach(GAPPS)を疑い,APC遺伝子promoter 1Bを解析した.その結果GAPPSに特異的な遺伝子異常であるc.-191T>Cの変異を認めた.GAPPSは新しい疾患概念であり,悪性化ポテンシャルが高い.密生する胃底腺ポリポーシスに遭遇した際はGAPPSを念頭においた精査が必要である.