日本消化器内視鏡学会雑誌
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手技の解説
直腸粘膜脱症候群診断のこつ
大川 清孝青木 哲哉上田 渉大庭 宏子佐野 弘治福島 裕子井上 健
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2014 年 56 巻 3 号 p. 494-503

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抄録

直腸の粘膜脱症候群(MPS)は顕在または潜在性の粘膜脱出があり,組織学的に繊維筋症を認める疾患単位である.隆起型,潰瘍型,平坦型などの多彩な内視鏡像を呈するため,癌を含む腫瘍性疾患や炎症性腸疾患との鑑別診断が重要である.
大きな隆起型MPSは表面にびらん,白苔,表面不整などがみられ癌と間違われやすく,繊維筋症を組織で証明できない場合もみられる.生検で繊維筋症がみられないが,内視鏡的や臨床的に疑った場合は,ポリペクトミー・粘膜切除術や経肛門的局所切除で大きい組織を取り診断することも考慮する.潰瘍型MPSでは2型癌との鑑別が重要である.癌と診断され過大な手術が行われることがあり,内視鏡診断は重要である.平坦型MPSは直腸下端前壁の発赤斑やHouston弁上の輪状発赤が多い.このような病変を認識していない場合は他の炎症性疾患と間違うことがある.

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© 2014 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
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