日本消化器内視鏡学会雑誌
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症例
胃穿破部の生検にて診断が得られた多形細胞型退形成癌の1例
中原 一有片倉 芳樹奥瀬 千晃小林 美奈子足立 清太郎伊澤 直樹野口 陽平小池 淳樹高木 正之伊東 文生
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2010 年 52 巻 8 号 p. 1901-1907

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抄録

症例は70歳,男性.吐下血を主訴に受診した.上部内視鏡検査で胃体上部後壁に頂部に出血性潰瘍を伴う外からの圧排による隆起性病変を認め,内視鏡的止血術を施行し入院となった.造影CTでは,膵体尾部に胃へ浸潤する9cm大の腫瘍性病変を認め,腫瘍は辺縁の造影効果が高く,内部が不均一な低吸収に描出された.また,肝内に転移巣と思われる多数の輪状造影効果を有する腫瘤を認め,前縦隔,右肺にも転移巣と思われる結節影を認めた.潰瘍底からの内視鏡下生検にて,多形細胞型退形成癌と診断し,塩酸ゲムシタビンによる化学療法を施行したが,全身性の発疹を認めたため1回のみの投与にて中止となり,初診より45日後に癌死した.退形成癌は稀な膵管癌の一型で,吐下血を契機に発見され,胃穿破部の生検から診断が得られた症例を経験したので報告する.

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© 2010 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
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