日本消化器内視鏡学会雑誌
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アルゴンプラズマ凝固法による金属ステントの焼灼・切断
田井 真弓市井 統渡邊 龍之江尻 豊大槻 眞
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2009 年 51 巻 4 号 p. 1181-1186

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抄録

【背景】手術不能の悪性胆道狭窄に対する金属ステントの留置は侵襲が少なく有用な治療である.金属ステントはプラスチックステントと比較し開存期間が長いという利点はあるが,留置したステントが十二指腸側へ逸脱することもあり,このような場合のステント抜去は困難である.われわれは逸脱したステント(Wallstent;Boston Scientific社製)をアルゴンプラズマ凝固法(argon plasma coagulation;APC)を用いて焼灼・切断しようと考え,焼灼の際の至適条件を検討した.
【方法】金属ステントはuncoverd Wallstentとcovered Wallstentを使用した.留置した金属ステントがVater乳頭開口部から逸脱している状態を想定し,Wallstentの断端から約2cmを残してブタ小腸で被覆し,ステント断端から1cmにAPCを施行した.APCではアルゴンガス流出量を2.0l/minとし,出力(30,60,99W)と照射時間(3秒,6秒)を設定し,Wallstent焼却・切断の至適条件を検討した.生体内は湿潤状態にあることから,covered Wallstentを湿潤下で追加実験を行った.
【結果】Covered Wallstentは出力30Wで焼灼可能であったが,uncovered Wallstentでは60W以上の出力を必要とした.Wallstentに対するいずれの条件下でもWallstentを被覆していた豚の小腸には肉眼的な熱性変化を認めなかった.
【結論】APCは30Wの低出力でWallstentの切断が可能であり,膵胆道組織への明らかな損傷を伴うことのない,有用かつ安全な方法であると考えられた.

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© 2009 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
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