超音波検査技術
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若手研究奨励賞―原著
右室流出路波形を用いた肺高血圧評価における描出断面による影響
小林 沙織水上 尚子大園 七瀬湯之上 真吾前之園 隆一堀添 善尚茶圓 秀人高崎 州亜湯淺 敏典木佐貫 彰大石 充
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2018 年 43 巻 4 号 p. 440-449

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抄録

目的:心エコー法による肺高血圧の評価では,肺動脈圧上昇に伴い,右室流出路血流速波形(RVOF)は2相性波形を呈し,加速時間の短縮がみられるようになる.また,RVOFのパターンの違いが,肺血管抵抗(PVR)の上昇と相関があるとの報告もあり,RVOFを解析することは,肺高血圧の評価において重要であると考えらえる.しかし,実際の症例では,RVOFのパターンが描出方向で一致しないこともあり,2相性の有無の判断や計測に迷う例も多い.そこで,今回,我々は,RVOFの描出断面による波形の違いと,肺高血圧評価に対する影響について検討を行った.

対象と方法:対象は,肺高血圧疑いで心エコーを施行した連続69例(男性12例,女性57例),平均年齢59±15歳.同一症例において,RVOFを大動脈弁短軸断面,右室流出路長軸断面,心窩部断面の3方向からパルスドプラ法にて記録した.右心カテーテル検査を施行した40例に関しては,PVRとRVOFの比較を行った.

結果と考察: 3方向から記録したRVOFは,心窩部断面で有意に記録不可例が多く(p<0.01),2相性波の検出率も低値であった(p<0.05).また,大動脈弁短軸断面,右室流出路長軸断面では2相性波を認めた群では,2相性波を認めなかった群に対し有意にPVRが高値を示したが(p<0.05),心窩部断面では2相性波の有無でPVR値に有意差は認めず,心窩部断面では,2相性波の有無で,PVR上昇を推定することは困難であると考えられた.一方,RVOFの時間速度積分値(VTI)は3方向いずれの断面でも,PVRとの相関がみられ(大動脈弁短軸断面r=-0.47, 右室流出路長軸断面r=-0.52,心窩部断面r=-0.56),流量を反映するVTIはPVRの推定に有用であると考えられた.

結論:心窩部断面からのアプローチでは,流量を反映するVTIは,PVRと良好な相関を示したが,PVR上昇を反映する2相性波パターンの検出には限界があり,注意が必要であると考えられた.

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© 2018 一般社団法人日本超音波検査学会
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