老年歯科医学
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老人病院における歯科治療介護システム作りに関する研究
入院患者の口腔内状況と歯科治療に対する意識
小川 仲子下山 和弘長尾 正憲寺岡 加代
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1992 年 7 巻 1 号 p. 36-41

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抄録

老人病院では, 口腔ケアは関係者の個人的な自覚と努力に任されている場合が多い。入院患者に口腔のトラブルがあっても身体的な不自由さから施設外の歯科医療機関を受診することは困難である。
老人病院における口腔ケアを考えるために, 入院患者の歯科治療に対して歯科を併設して取り組んでいる大宮共立病院で入院患者の口腔内の状況と歯科治療に対する意識の調査を行った。調査対象は入院患者34名, 平均年齢79歳であった。口腔内診査の結果, 治療が必要思われる28名のうち治療希望は4名であった。治療の必要性と希望の乖離の原因としては, 家族や介護者に迷惑をかけたくないという思い, 今までの治療経験に起因する諦め, 歯科医療従事者と高齢者との間の特に「噛む」ことに対する評価の違い等が考えられる。病院に歯科があることは, 第一に医療, 介護に歯科的な視点が加えられること, 第二に患者の潜在的な治療要求を掘り起こさせるということにより, この乖離を減少させることに資するであろう。口腔内の清掃状況は評価良が義歯では10名, 残存歯では4名であった。口腔ケアについては看護職員, 介護職員の参加が重要である。高齢者の口腔内は種々の要因により清掃が難しく, 看護職員, 介護職員は困難さを感じている。口腔ケアの重要性を認識してもらうとともに負担にならずにできるように援助, 協力していくことが重要であろう。

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© 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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