老年歯科医学
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唾液を用いた臨床試験による高齢者う蝕の発生予測に関する研究
鈴木 明子鈴木 章稲葉 繁
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1997 年 12 巻 1 号 p. 3-10

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抄録

高齢者におけるう蝕の予防対策に取り組むため, まず将来う蝕が発生する危険性のある者の定義を明確にして, う蝕発生を予測する手段を開発することが必要である。
本研究は, 日常臨床で使用される唾液を用いた臨床試験および口腔診査から, 高齢者う蝕の発生予測を調べる目的で実施された。対象は, 日本歯科大学歯学部附属病院高齢者歯科診療科に来院した歯根面露出のある患者で, 本研究の主旨を説明し同意を得た61~82歳の62名, 男性31名, 女性31名,(平均年齢71.4歳) である。
3種類の微生物検査を含む6種類の唾液検査と口腔診査によるベースライン診査の結果と, 1年間に発生した露出根面部う蝕との関係を検討し, 以下の結論を得た。
1) 初診時のう蝕罹患者率は, 歯冠部が42.0%, 露出根面部が50.0%であった。ベースライン診査1年後のう蝕発生者は, 歯冠部が19.4%, 露出根面部が32.3%であった。
2) Mutans Streptcocci (SM) 陽性群潜血反応陽性群のいずれも, その陰性群に比べて露出根面部う蝕の発生が有意に高かった。
3) 露出根面部う蝕発生群の唾液分泌速度はう蝕非発生群と比べて有意に低かった。
4) SM, 潜血反応, 分泌速度の3試験の組み合わせにより, 露出根面部う蝕の発生予測度が向上した。
5) ベースライン診査1年後に露出根面部う蝕の発生がみられたもののうち, 67.0%は初診時にう蝕罹患者であった。

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© 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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