1997 年 12 巻 1 号 p. 26-31
高齢顎関節症患者の実態を把握するため, 60歳以上の顎関節症患者40名を対象に初診時の臨床所見, 診断治療法, 口腔内の状態 (義歯装着者, 咬合支持域数) について調査した。また, 本院総合診療室にて現在治療中, またはリコールで術後管理されている60歳以上の患者と, 口腔内状態を比較した。
顎関節症患者の主訴は, 疹痛80%, 関節雑音12.5%, 開口障害7.5%であった。症型分類では皿型, IV型の頻度が高く, 女性に重症例が多かった。治療はスプリント療法, 義歯調整を中心とした咬合治療と理学療法の併用が主に行われ, 77.5%の症例で, 症状が消失または軽快した。重症例, 義歯装着者や義歯を必要とする症例, 咬合支持域数の少ない症例は, 治療が長期化した。
同年齢層の一般歯科受診者に比べ, 顎関節症患者は, 義歯装着者の割合が低く, 咬合支持域数が多いことから, 必ずしも咬合の崩壊は進んでいなかった。しかし, 一度顎関節症を発症すると, 義歯装着者や残存歯の咬合接触が少ない症例では, 治療が長期化する傾向がみられた。