老年歯科医学
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要介護高齢者における有床義歯の適応に関する研究
小柴 慶一小笠原 正野村 圭子太田 慎吾渡辺 達夫笠原 浩
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1996 年 10 巻 3 号 p. 194-203

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抄録

要介護高齢者にとっての有床義歯使用の可能性を検討するために, 有床義歯の使用状況とそれに関与する因子について調査した.対象は特別養護老人ホーム入所中の65歳以上の者102名とした.102名のうち, 有床義歯を使用している者が37名, 有床義歯が必要であるにも拘わらず使用していない者が54名いた.tこの両群を分析対象とし, 有床義歯の使用・非使用に関与する本人の能力及び口腔状態について検索した.その結果, 以下のことが明らかとなった.
1.調査項目のうち, 着衣, 排泄, 食事, 口腔清掃, 移動, 手の機能及び痴呆の程度 (長谷川式簡易知的機能スケール) の7項目については, 有床義歯使用・非使用との間に関連性 (p<0.01) が認められた.
2.視力, 聴力, 欠損歯数, 歯冠数, DMFT, 欠損歯の分布状態及び年齢の7項目にっいては, 関連性は認められなかった.
3.関連性の認められた項目を説明変数とし有床義歯の使用・非使用を外的基準として数量化II類による分析を行った結果, 相関比は0.372で判別的中率は76.9%であった.
4.有床義歯の使用・非使用に最も強く影響するものは, 着衣であった.
要介護高齢者に対して, 有床義歯による補綴を行う際には, ADLの評価と, 痴呆の程度の把握によって, 有床義歯使用の可能性をある程度判断できることが明らかになった.

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© 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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