老年歯科医学
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原著
高齢者の歯科治療における最適時間帯を探る
―アンケート調査からの考察―
玉澤 佳純玉澤 かほる岩松 正明山口 哲史
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2012 年 27 巻 2 号 p. 69-76

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抄録

本研究の目的は,高齢者の歯科治療の最適時間帯を探ることにある。東北大学歯学部附属病院を受診した 65 歳以上の患者 100 名(高齢者群)と,20 歳代の患者 100 名(若年者群)を対象として,歯科治療を希望する時間帯,治療時間の長さ,身体的要因(体調の良否,全身疾患,服用薬),社会的要因(交通機関,通院の所要時間)等のアンケート調査を行い,歯科治療の最適時間帯を検討した。その結果,高齢者群では,歯科治療の希望時間帯は 10 時〜11 時が最も多く(42%),次いで 11 時〜12 時(18%),9 時〜10 時(13%)の順で,午前中を希望する人が約 73%を占めた。また,起床直後,および昼食後から夕方にかけて,体調不良を訴える人が 56%いた。さらに,昼寝をする人が23%いた。治療時間の長さは,30 分〜1 時間が最も多く(56%),次いで 30 分以内(20 %),1 時間〜1 時間 30 分(15%)の順であった。一方,若年者群では,歯科治療の希望時間帯は 9 時〜21 時まで広く分布しており,高齢者群と違いがみられた。また,若年者群でも体調不良を訴える人が 21%おり,多くが起床直後(14%)であった。しかし,昼寝をする人は1名(1%)であった。さらに,治療時間の長さは,高齢者群より短い傾向にあった。以上より,高齢者は体調が安定している午前中に歯科治療を希望する傾向が認められ,高齢者の歯科治療には,バイオリズムを反映した最適時間帯が存在する可能性が示唆された。

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© 2012 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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