比較眼科研究
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原著
正常ビーグル犬の光刺激を用いた視覚誘発電位における散瞳状態の影響、刺激眼による応答の差および再現性の検討
伊藤 良樹前原 誠也富田 沙織泉澤 康晴
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2010 年 29 巻 p. 7-12

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抄録

目的:ビーグル犬の光刺激を用いた視覚誘発電位(fVEP)における散瞳状態による影響、左右の刺激眼による応答の差、および再現性を検討した。方法:7頭の健常なビーグルを対象とした。fVEP記録にはポータブルVEPシステムを用い、鎮静下で散瞳前後に記録を行った。電極には皿形電極を用い、記録電極を後頭結節、基準電極を鼻根部正中、接地電極を側頭部に設置した。fVEP記録は各対象の片眼ずつ薄暗い部屋で実施し、128回の刺激を加算平均した。刺激装置の刺激強度は3.0cd·s/m2、刺激頻度は1.5Hzの設定を用い、対象眼と刺激装置の距離を2cmにして白色光による刺激を行った。fVEP記録結果におけるN2およびP2を計測し、N2潜時とP2潜時、およびN2-P2振幅を算出した。VEP記録の再現性を評価するため、1度目の測定から7日後に同様の対象でfVEP記録を実施した。結果:散瞳前後のfVEP記録結果を比較すると、N2とP2潜時、およびN2-P2振幅には有意差がみられた。散瞳後のN2潜時は32%減弱、P2潜時は19%減弱しており、N2-P2振幅は60%増加していた。右眼刺激より得られた応答と左眼刺激より得られた応答を比較すると、潜時および振幅に有意な差はみられなかった。また、N2およびP2潜時において再現性が認められた。結論:本研究の結果より、我々の方法による犬のfVEP記録においては、散瞳後に記録を実施し、応答の評価には再現性の高い潜時を評価するべきである。また、各眼を刺激して得られた応答を比較することで、視路における障害部位を推測するのに有用であると推察された。

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© 2010 Japanese Society of Comparative and Veterinary Ophthalmology
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