認知神経科学
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シンポジウムⅡ-02
倍密度光トポグラフィーへの挑戦
小黒 恵司横田 英典檀 一平太渡辺 英寿
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2012 年 14 巻 1 号 p. 27-34

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抄録

光トポグラフィー(Optical topography 以下OT)は近赤外線を利用し、脳表皮質のヘモグロビン濃度の変化を非侵襲的かつリアルタイムに測定する計測器である。脳機能局在診断のほか、脳神経外科や精神科等多数の領域で臨床応用されている。言語優位半球の同定とてんかん焦点診断に関しては保険点数が認められ、うつ病の診断には先進医療の適応を得ている。本装置は空間分解能が低いことが最大の欠点である。この欠点を改善するために我々は、従来型OT に比し約2 倍の空間分解能を有する倍密度光トポグラフィー(DoubleDensity OT 以下DD-OT)の開発を進めてきた。DD-OT では対となる送受光器の間隔は3cmに保持したまま、その中間位置にもう一つの送受光器を配置することにより、計測間隔を従来の半分、すなわち1. 5 cmとなるように設定した。正常成人5 人に手指運動・感覚刺激を負荷し、従来型OT による結果と比較した。手指運動では一次運動野を、手指感覚刺激では一次感覚野を中心とした酸素化ヘモグロビン濃度の増加を認めた。従来型OT ではプローブ位置のわずかな変化によって活動領域の描出が出来たり出来なかったりと結果が安定せず、DD-OT により初めて安定的かつ限局性境界明瞭なマップが得られた。MRI 上、脳浮腫により画像的診断の困難な運動野の術前同定や皮質てんかんの焦点診断等、臨床応用における有用性が示唆された。

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