認知神経科学
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シンポジウムⅡ
精神疾患の診断ツールとしての光トポグラフィー
野田 隆政中込 和幸
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2011 年 13 巻 2 号 p. 170

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抄録

精神疾患はその原因が解明されておらず、これまで診断に結びつく有効な検査方法がないことが課題であった。そのため、実際の臨床では問診で得られた情報から診断し治療をするのであるが、診断は治療に反映されるため、的確な診断が大変重要である。さらに、問診による診断のみで客観的な検査がないことから、患者が病識を獲得しきれず治療につながらないこともあり、診断に有用な検査が必要とされてきた。これまで遺伝子検査や脳機能画像検査、生化学的検査など、精神疾患を対象としてさまざまな研究がされてきた。近赤外線光トポグラフィー(near-infrared spectroscopy:NIRS)は脳機能画像検査として精神科へ応用された。1994 年にOkada らが統合失調症の報告を行い、以後気分障害、統合失調症を中心に前頭葉機能課題に対して気分障害圏や統合失調症圏において、精神疾患毎に異なった脳血液量変化のパターンを示すという報告がされている。このような診断補助ツールとしての有用性が評価され、2009 年4 月「光トポグラフィー検査を用いたうつ症状の鑑別診断補助」として先進医療に承認された。また、最近はパニック障害や摂食障害などへも応用されるようになっている。NIRS は非侵襲的な検査方法であり、自然な姿勢で検査ができる。また、時間分解能が高く、装置がコンパクトであるため移動もでき、再現性も比較的高い。このようなNIRS の利点を生かすことで、空間分解能が低いという欠点を補うことができると思われる。NIRS は精神科へ応用しやすい利点を備えており、今後の発展が期待される検査方法であるといえる。今回のシンポジウムでは先進医療に承認されたNIRS および、精神疾患を対象としたNIRS 研究の最近の動向について紹介する。

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