脳と発達
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総説
思春期のWeekend catch-up sleep/Weekend oversleepの現状と課題
神山 潤安西 有紀
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2024 年 56 巻 2 号 p. 106-113

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抄録

 思春期世代のおおよそ25~84%が眠気を訴えている.その主な原因は睡眠不足だが,思春期の睡眠不足の自覚は週前半には低く,後半で高まる.思春期世代は平日に抱えた睡眠不足を週末に取り戻していると考えられる.週末(休日あるいは非登校日)と平日(登校日)の睡眠時間の差異をWeekend catch-up sleep(WeCUS)またはWeekend oversleep(WeOS)と称するが,この指標は睡眠不足を反映すると考えられている.本稿では思春期のWeCUS/WeOSの現状と今後の課題を記載する.本邦の10歳代群の週末と平日の平均睡眠時間の差異は近年延長し,2020年の値は1.3時間となった.報告例からすると,WeCUS/WeOSは女子で長く,年齢が上がるにつれて,また始業時刻が早いほど延長する.しかしWeCUS/WeOSとクロノタイプ,抑うつ,危険を伴う行動,自殺想起/企図,睡眠覚醒に関する課題,体重,学業成績,眠気との関連については研究結果が一致していない.本邦中高生の非登校日の平均睡眠時間は,思春期に必要な睡眠時間と推察した8.5時間に達しておらず,現状のWeCUS/WeOSでは本邦の思春期世代の潜在的睡眠負債解消には十分ではない可能性がある.潜在的睡眠負債改善の重要性が理解されはじめており,慢性の睡眠不足に苛まれている思春期世代に対する効果的な改善策の構築が特に日本においては急ぎ求められている.

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© 2024 一般社団法人日本小児神経学会
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