脳と発達
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症例報告
幼児期早期から小脳性失調と不随意運動を呈し,血清学的検査が早期診断に有用であった毛細血管拡張性運動失調症の1例
森島 直子衞藤 薫権藤 茉由子南雲 薫子佐藤 友哉石黒 久美子西川 愛子中務 秀嗣伊藤 進平澤 恭子永田 智
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2023 年 55 巻 1 号 p. 34-37

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抄録

 幼児期早期に小脳性失調と不随意運動を呈し,血清学的検査により毛細血管拡張性運動失調症(ataxia telangiectasia;AT)と早期診断し得た2歳男児について報告する.患児は,歩行開始時期までは運動発達遅滞の指摘はなかったが,歩行のふらつきが持続したため精査目的に入院した.歩行は,ふらつきを代償するために突進様に進み,転倒のしやすさがあった.また,物を掴むときにアテトーゼ様の手指がうねる動きを認めた.ATを鑑別に挙げ,血液検査でalpha-fetoprotein(AFP)高値,IgG低値,IgG2低値を認めた.遺伝学的検査にて,ATM遺伝子にフレームシフト〔NM_000051.3(ATM):c.1402_1403del[p.Lys468Glufs*18];rs58771347〕とスプライシングバリアント〔NM_000051.3(ATM):c.8585-1G>A;rs876660066〕を認め,確定診断した.ATの神経症状は多彩であり,特徴的な毛細血管拡張症状を呈するのは幼児期後半以降であるため,本症の早期診断は課題である.また,神経症状だけでなく易感染性や悪性腫瘍など合併症に対する適切な経過観察は生命予後の観点からも重要である.小脳性失調症状に加えて不随意運動を呈する児に対して血清学的検査を行うことが,早期診断につながる.

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© 2023 一般社団法人日本小児神経学会
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