脳と発達
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原著論文
どうしたら重症児を持つ家庭が次子出産の際に短期入所を安全に利用できるか
植田 佑樹幅田 有美須藤 章
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2019 年 51 巻 4 号 p. 229-233

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抄録

 【目的】高度な医療的ケアを必要とする重症心身障害児の多くは主な介護者が母親である. 母親が次子出産時に短期入所がしばしば必要になるが, 安定した病状で過ごすために何が重要かを検討した. 【方法】2012年4月~2015年12月に楡の会こどもクリニックの短期入所を利用登録した患者の年齢, 理由, 利用日数, 医療的ケア, 事前の短期入所の有無, 体調不良による転院の有無を調査した. その中で母親が次子出産のために利用希望があった症例群の特徴を分析した. 【結果】全利用者227名の多くはレスパイト目的の1週間以内の利用であった. 2週間以上の長期利用は22名であった. 長期利用の理由は母親の次子出産が10名と多く家族の病気や養育困難が続いた. 全利用者の体調不良での転院は7.0%であったが2週間以上で40.9%であった. 母親が次子出産のため利用希望した18名の大多数が医療的ケアを必要とした. 4名が病状不安定等で利用できなかった. 5名が体調不良による転院を要した. 2週間以上の長期利用でも病状安定していた6名はいずれも事前の短期入所を経験していた. 【結論】母親が次子出産時の重症児の短期入所は長期化しやすく, 体調不良時の転院を想定した他院との連携が必要である. 事前の短期入所は病状安定に寄与しうる. 医療的ケアを要する重症児の短期入所は負担も大きい. 在宅を基盤とした介護サービスの充実も望まれる.

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© 2019 一般社団法人日本小児神経学会
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