1994 年 42 巻 11 号 p. 1225-1235
1993年に臨床検査材料から分離された30株の肺炎球菌を用いて, β-ラクタム系薬の感受性, ペニシリン結合蛋白 (PBPs) の親和性, PCRによるPBP2B遺伝子の検索を行い, 以下の成績を得た。
の成績を得た。
1) これらの菌株の中には, penicillin G (PCG) に対するMICが≧0.125μg/mlで, ペニシリン耐性肺炎球菌 (PRSP) と判定された株が15株認められた。
2) PRSPのoxacillin (MPIPC), ampicillin (ABPC), cefotaxime (CTX), cefdinir (CFDN) およびimipenem (IPM) に対するMICは, ペニシリン感性肺炎球菌 (PSSP) に対するそれとは明らかに異なっていた。
3) PRSPとPSSPの識別を行うために, それらのPBP2B遺伝子の一部を増幅するための3種類のプライマーを作成してPCRを行った。PCGのMICがく0.125μg/mlの菌株では, 感性菌検出用のプライマーでDNAが増幅された。一方, PRSP検出用のプライマーでDNAが増幅された株は, すべてPCGのMICが≧0.125μg/mlであった。その内訳は, classAが1株, class Bが10株であった。PRSPであるにもかかわらず, PSSP用のプライマーでDNAが増幅された菌株が4株認められた。
4) PRSPではPBP 2 Bに対する [3H]-PCGの親和性が低下しており, それに加えて1Aや1Bの親和性も低下している株が多かった。一方, PSSPの中にも1Aや1Bに対する親和性が低下している株, あるいは2Xが新たに出現している株が認められた。
以上の成績から, 本邦におけるPRSPにはclass Bに属するPRSPが多く, class AのPRSPは少ないことが推定されたが, 今までの報告にはないPBP 2B遺伝子の変異株もあることが示唆された。