CHEMOTHERAPY
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泌尿器科領域におけるNY-198の基礎的・臨床的検討
恒川 琢司熊本 悦明西島 紀子門野 雅夫江夏 朝松
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1988 年 36 巻 Supplement2-Clinical 号 p. 803-825

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抄録

新しく開発されたピリドンカルボン酸系合成抗菌剤であるNY-198に対し, 基礎的・臨床的検討を行なった。
1. 体内動態
腎不全患者5例 (軽度障害患者3例;Ccr=58.8~72.8ml/min, 中等度障害患者1例;Ccr=30.0ml/min, 高度障害患者1例;Ccr=9.8ml/min) に本剤200mgを単回投与した。最高血中濃度は, 軽度および中等度障害患者で4時間後にそれぞれ1.50±0.47μg/mlと1.63μg/mlの値を示し, 高度障害患者では8時間後に1.35μg/mlを示した。尿中排泄では, 軽度障害患者が2~4時間に最高尿中濃度184.52±125.25μg/ml, 24時間尿中排泄率59.08±13.22%を示し, 中等度障害患者では8~12時間に最高尿中濃度72.80μg/ml, 24時間尿中排泄率16.56%の値をとったが, 高度障害患者では4~6時間に最高尿中濃渡19.40μg/ml, 24時間尿中排泄率5.78%であった。腎機能が悪化するにつれて尿中排泄率が低値になる傾向が認められた。
2. 抗菌力
教室保存の臨床分離株Klebsiella pneumoniae (41株), Proteus mirabilis (48株), Indole陽性Proteus spp.(50株), Serratia marcescens (31株) に対し, NY-198, norfloxacin (NFLX), ofloxacin (OFLX), enoxacin (ENX), ciprofloxacin (CPFX), cefaclor (CCL) の6薬剤のMICをMIC2000システムにて測定し, 比較検討した。本剤の抗菌力はCPFXよりやや劣っていたが, NFLX, OFLXおよびENXとほぼ同等であり, CCLよりかなり優れた値を示した。
3. 臨床効果
急性単純性膀胱炎4例, 慢性複雑性膀胱炎22例, 慢性前立腺炎5例の計31例を対象として検討を行なった。急性単純性膀胱炎では3日投薬にて有効率100%であり, 慢性複雑性膀胱炎では5日投薬にて有効率77.8%であった。また, 慢性前立腺炎では5例中, 有効1例, やや有効4例であった。副作用については自覚的にも血液生化学検査においても異常は認められなかった。

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