CHEMOTHERAPY
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新規半合成penicillin剤TA-058に関する基礎的・臨床的研究
松本 慶蔵宍戸 春美山本 真志宇塚 良夫永武 毅原田 知行高橋 淳隆杉 正和貝田 繁雄渡辺 貴和雄木村 久男工藤 國夫玉木 重
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1984 年 32 巻 Supplement2 号 p. 417-434

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抄録

TA-058は, penam環6位側鎖にアミノ酸残基 (N4-methyl-D- asparagine) を有する新規半合成penicillin剤である。TA-058について, 呼吸器感染症を中心に臨床応用するため基礎的研究を行い, 更に臨床例について本剤の有用性を検討した。
TA-058のin vitro抗菌力では, 呼吸器病原性の明確なH.influenzae (MIC: ≦0, 013μg/ml~0.1μg/ml) とS. pnsumoniae (MIC: 0.025μg/ml~0.1μg/ml) に対して優れた抗菌力を有していた。
TA-058の喀痰中移行率 (血中濃度ピーク値に対する最高喀痰中濃度の比) は3.07%~7.45%(平均5.29%) であった。局所採痰法による細気管支分泌物中への移行率は, ピーク血中濃度の20.1%, 8.0%であった。
TA-058の臨床例に対する投与量。投与法は, 本剤1g, 1日2回の点滴静注を原則とした。呼吸器感染症18例に対する臨床効果は, 著効3例, 有効14例, やや有効1例, 有効率94.4%であった。尿路感染症10例に対する臨床効果は著効2例, 有効6例, 無効2例, 有効率80%であり, 呼吸器感染症よりも低い有効率であった。感染性心内膜炎1例では, 有効であった。TA-058を投与した29例中, 副作用および臨床検査値の異常は全く認められなかった。
以上の成績より, TA-058は, 特にH.influenzaeS.pneumoniaeによる呼吸器感染症およびS.faeealisによる尿路感染症に対し極めて高い有効性を発揮し, 臨床的有用性の高いpenicillin剤であると結論される。

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