CHEMOTHERAPY
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尿路におけるCoagulase-Negative Staphylococcusの病原的意義について
嶋津 良一
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1982 年 30 巻 11 号 p. 1319-1336

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抄録

尿路感染症におけるcoagulase-ncgativc Staphylococcus (以下C. N. S.) の臨床的意義について検討を行なった結果, 次のような結論を得た。
1) 女性の急性単純性膀胱炎における検討では10個/HPF以上の膿尿を有し, かつC. N. S. が単独で105個/ml以上の菌数で検出された場合を原因菌と考えたが, その分離頻度は10%内外で, E. coliに次いで多かった。
2) C. N. S. による急性単純性膀胱炎の臨床的特徴としては, 好発年齢がE. coliによるものに比べると若干若年層に多いこと, および冬季よりも夏季に分離頻度が高くなる傾向を認めた。
3) これらの症例に化学療法を行なうとC. N. S.の消失と同時に症状, 膿尿も消失することからも, C. N. S. が原因菌であることは確実と思われた。
4) 慢性複雑性尿路感染症由来のC. N. S. は, 103個/ml以下の菌数で分離され, しかも複数菌感染の形態をとるものが多く, また有意の膿尿をともなわない場合が多いことから, 臨床的病原性は低いと考えられた。
5) 急性症由来株のbiovarとしては, BAIRD-PARKERの分類ではSII型, 次いでSIV型が多く, またKLoos & SCHLEIFERの分類ではS. saprophyticus, 次いでS. epidermidisが多かった。一方, 慢性症由来株ではSII型, SV型, M3型などが多く, KLOOS & SCHLEIFERの分類では圧倒的にS. epidermidisが多かった。
6) S. saprophyticusはほとんどの株がNovobiocin耐性であったが, 感性株も少数認められ, またS. epidermidisの中にもNovobiocin感性株が57%, 耐性株が43%認められた。したがってNovobiocin感受性によってS. saprophyticusS. epidermidisを簡易同定することには問題があるものと考えられた。
7) このように急性症由来株と慢性症由来株とはbiovarの分布が異なっており, 感染源や感染形式に相違があるものと思われた。

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