熱帯農業
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タイ国北西部におけるカレン族の土地評価法に関する研究
―陸稲の生育収量と土壌の理化学性からみた在来の土地評価法の吟味―
平井 英明高柳 頼人星野 幸一加藤 秀正
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2005 年 49 巻 2 号 p. 159-168

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抄録

タイ北西部のカレン族の居住する焼畑農村において陸稲栽培地の農耕民による評価法の土壌・作物学的な検討を行った.その結果, 栄養生長期におけるイネ植物体の窒素含有量・吸収量, 草丈, 分げつ数や表土の窒素無機化量は, 優良地の方が劣悪地よりも高い傾向にあった.葉色は窒素肥料の多寡を反映することを考慮すると雨期に緑色のやや濃いイネが旺盛に育つ土地が優良地であると判断していると考えられた.気象データおよび土壌の理化学性からイネの幼穂形成期において, 重埴土で透水性の低い優良地では, 軽埴土で透水性の大きい劣悪地に比較して土壌水ポテンシャルの低下が緩慢で, 土壌水分が潤沢であると推論された.このことから農耕民は, 潤沢な水分を含む土壌を優良地であると判断していると推論された.収穫期において優良地に生育するイネの特徴は, 1) 穂が長く, 2) 一穂籾数が多く, 3) 収量のばらつきが少ない, という特徴をもち, 劣悪地のイネ植物体の特徴は, 1) 穂が短く, 2) 一穂籾数が少なく, 3) 収量のばらつきが大きく, 4) 除草を怠ると穂の生長に影響がでる, という特徴があった.すなわち, 農耕民は, 穂が長く, 一穂籾数が多く, 収量のバラツキが少ない土地が優良地であると判断していると推定された.

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© 日本熱帯農業学会
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