熱帯農業
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アッケシソウの植物体地上部における塩の移動及び排出
志水 勝好上田 堯夫
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1996 年 40 巻 1 号 p. 20-25

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抄録

アッケシソウ (Salicornia herbacea L.) は極めて強い耐塩性を有しており, それは植物体の組織構造と密接な関係があることが明らかとなった.そのためアッケシソウの根をNaCIと共に色素を加えた培養液に浸し, 吸収させ, 塩の吸収移動経路を追跡した.その結果, 塩分は節より発生した2本の対生した導管を通り, 更に節の維管束を取り巻く緻密な組織細胞群を経て移動していることが明かとなった.導管は棚状組織と柔組織との境に網状に展開・分岐し; NaClは外側柔組織細胞より吸収されていた.そして節間が萎縮・枯死することにより蓄積されたNaClは結晶化し, 上位節間に再転流しないものと考えられた.なお節より発生した導管は, 上下の節間では接続しておらず, 各節間は維管束鞘以外は独立していると推察される.
植物体外への塩の排出を確認するため, 植物に5%NaC1培養液処理を行い, その後の生育を観察した.また3%NaC1培養液に色素を加え, 処理栽培し, 色素とNaClの移動を観察することにより排出経路を確認した.その結果, 処理栽培中の植物体表面に水滴の付着が確認できた.その後植物体表面に白い付着物を確認したが, 走査電子顕微鏡により観察した結果, これがNaClの結晶であることが判明した.アッケシソウ植物体表面に色素とNaC1の結晶が確認できたことからアッケシソウは塩水を植物体表面から排出するものと考察した.またアッケシソウ植物体表面における走査電子顕微鏡による観察から気孔より塩水を排出すると結論づけた.

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