熱帯農業
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Oryza rufipogon K61系統をO.sativa台中65号で核置換した系統における雄性不稔の遺伝
本村 恵二比嘉 禎久村山 盛一石嶺 行男
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1992 年 36 巻 1 号 p. 8-13

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抄録

O.rufipogon W0180系統 (琉球大学保存系統番号K61.以下, K61を用いる) の細胞質と稔性回復遺伝子をO.sativa台中65号に導入する過程で雄性不稔およびその稔性回復性が見られた.これらの現象は細胞質と核内遺伝子の相互作用であろうことが予想されたので以下の実験を行った.導入過程で得られた系統には種子稔性で正常稔性, 花粉稔性で50%稔性を示すもの (RT61A) と種子稔性・花粉稔性ともに0%を示すもの (RT61B) の2つがあり, これら2系統と台中65号との間に種々の交雑を行うことによって以下のことを明らかにすることができた.
この雄性不稔および稔性回復の発現には細胞質と一対の稔性回復遺伝子とが関与しており, また花粉の稔性は花粉自身のもっ遺伝子型によって決定され配偶体支配であった.すなわち, 台中65号の細胞質 (n) のもとでは稔性回復遺伝子の優劣に関係なく常に正常花粉を形成し, したがって種子稔性も正常に発現する.しかしRT61の細胞質 (ms) のもとでは優性の稔性回復遺伝子Rfをつ花粉のみが正常に発育し, 劣性遺伝子rfをもつ花粉は発育途中で停止する.したがって種子稔性は遺伝子型によって稔または不稔となる.これらのことを細胞質および遺伝子型と稔性との関係で示せば次のようになる. (ms) RfRfは種子稔性・花粉稔性ともに正常稔, (ms) Rfrfは種子正常稔・花粉半稔 (50%) , (ms) rfrfは種子・花粉稔性ともに完全不稔, (n) RfRf, (n) Rfrf, (n) rfrfはいずれも種子稔性・花粉稔性ともに正常稔を示す.

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© 日本熱帯農業学会
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