日本顎関節学会雑誌
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顎関節症に対する関節腔内洗浄療法の検討
極細径関節鏡による上関節腔後部所見と予後の関連について
高木 律男松下 健中山 勝憲小林 龍彰柴田 寿信大橋 靖近藤 寿郎
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1995 年 7 巻 2 号 p. 328-338

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抄録

顎関節部に疼痛を伴う顎関節症患者17名 (男性1名, 女性16名, 年齢は17歳から69歳, 平均33歳) に対し, 顎関節腔内洗浄療法を試み, 同時に洗浄用の18ゲージ針から挿入可能な関節鏡を用い腔内の状態を観察したので, その治療成績ならびに診断的意義について報告した。
方法は, 局麻後下外側穿刺にて上関節腔に21ゲージ針および18ゲージ針を刺入。18ゲージ針から関節鏡を挿入して, 腔内の状態を観察した後, 乳酸化リンゲル液250mlで洗浄した。ステロイド剤を注入し, 抜針後マニピュレーションまたは強制開口を行った。
評価は, 洗浄前, 処置後2週, 1か月, 3か月において, 疼痛, 開口量の変化および, 鏡視所見との関連について比較した。
その結果, 疼痛では2週後11例 (64.7%), 1か月後12例 (70.6%), 3か月後14例 (82.4%) で有効であった。開口量ではロック解除例の平均が2週後42.3mm, 1か月後42.0mm, 3か月後45.0mmであるのに対し, 非ロック解除例での平均は2週後で30.2mm, 1か月後で30.8mm, 3か月後で34.5mmであったが, 全体でも平均12mmの増加を認めた。
また, 上関節腔後部の鏡視所見では, 関節軟骨または関節円板の粗造面 (81.3%), 滑膜炎 (75.0%), 浮遊物 (75.0%), 癒着 (50.0%), 出血 (43.8%) が観察された。これらの所見と予後の関係では, 癒着や浮遊物について, 術後の開口量との関連が示唆された。

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© 一般社団法人日本顎関節学会
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