日本顎関節学会雑誌
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ラット顎関節における知覚および交感神経支配について
森本 佳成匠原 悦雄増田 達雄川上 哲司杉村 正仁
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1993 年 5 巻 1 号 p. 22-29

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抄録

Horseradish peroxidase (HRP) 法を用いて顎関節を支配する知覚および交感神経起始細胞の分布について検討した。
Wister系ラット20匹に対し, (1群) 片側顎関節, (2群) 片側顎関節および対側上顎大臼歯歯髄, (3群) 外頸動脈神経叢を切断除去した後顎関節, (4群) 耳介側頭神経切断後顎関節にHRP1-3μl注入した。24時間生存後環流固定し, 上頸 (SCG)・星状 (SG)・三叉神経節 (TRG) を取り出しtetramethyl benzidine法にて処理した。
(1群) SCGでは標識細胞は一様な分布をしていたが, SGには認めなかった。TRGでは第3枝領域内に分布していた。(2群) 顎関節支配のSCG標識細胞の大きさは19.2±2.1μmと小さかった。TRG標識細胞の大きさは顎関節側23.3±5.4μm, 歯髄側27.8±5.4μmで, 顎関節のほうが有意に小さかった。(3群) SCG標識細胞数は1.8±2.1個で非切断群よりも非常に少なかった。 (4群) SCG標識細胞数は0個であった。TRG標識細胞数は2.6±1.5個で非切断群24.8±7.2個の約1/10であった。
これらの結果より交感神経は外頸動脈神経叢を出た後耳介側頭神経に合流して顎関節に分布する。顎関節の知覚の大部分 (90%) は耳介側頭神経により支配され, また歯髄神経はAδとC線維であることから, 顎関節支配神経は小さなAδとC線維が主体であると考えられる。

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© 一般社団法人日本顎関節学会
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