日本顎関節学会雑誌
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顎関節習慣性脱臼を示した3症例における関節円板の動態
そのエックス線学的検索所見について
沢井 清治石橋 克禮浅田 洗一浜田 清俊深谷 哲司尚原 弘明山中 一成地挽 雅人小林 馨
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1989 年 1 巻 1 号 p. 195-208

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抄録

習慣性脱臼における顎関節硬組織形態と関節円板の動態との関連を検討するため, 顎関節造影を行った習慣性脱臼3例4関節について多層断層所見を中心に検討を加えた。
3例4関節とも上関節腔の前方への大きな拡大を示した。このうち, 不全脱臼を示した2例では開口時, 下顎頭は関節円板を伴い関節結節を越え, 大きく前方移動し, 関節円板後組織は伸展したが, 下顎頭は関節円板中央狭窄部にあり, 相互関係は正常であった。また, 関節結節下縁は比較的平坦で, このうちの1例において関節円板の前方転位を認め, 他方の1例に関節結節下縁の著明な骨の陥凹を認め, 開口時の下顎頭は同部にはまり込んだ様相を呈していた。これに対し, 習慣性完全脱臼の1例では関節結節前方部の骨は形態急峻で, 関節円板後組織の伸展は比較的大きくはなく, 下関節腔の拡大を伴い下顎頭は関節円板を越えて前方に移動していた。この症例のもう一方の関節は不全脱臼の状態にあり, 関節結節下縁はやや平坦型を示し, 上記の不全脱臼例に近い特徴を有しており, 関節円板の前方転位を認めた。
以上のごとく, 習慣性脱臼では下顎頭の過剰な前方移動に伴い, 関節円板を伴うものとこれを乗り越えるものを認め, また, 骨形態においてもやや幅広い変化を伴っていることが明らかとなった。

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