2006 年 21 巻 2 号 p. 2_19-2_24
身体機能の回復を必要とする脳卒中患者に対する栄養療法は、NST(Nutrition Support Team:栄養サポートチーム)の普及によって今大きく変わろうとしている。特に急性期病院では、絶食の功罪の明確化が浸透し、早期経腸栄養や早期PEG(Percutaneus Endoscopic Gastrostomy:経皮内視鏡下胃瘻造設術)が積極的に実施されるようになってきた。しかし、身体機能回復を目指した栄養管理に関しては未だ多くの問題点が残されており、早急に代謝学的な見地から適正栄養管理法を確立することが必要である。最近の研究によって、安静時エネルギー消費量(REE)はHarris-Benedictの式から予測される基礎エネルギー消費量(BEE)より、約10%高値であることが明らかにされ、累積エネルギーバランスが著しく負に傾かないように栄養管理することが重要である。回復期リハビリテーション病院では、真のエネルギー・蛋白必要量が、わが国のNSTにて用いられている計算値よりも実際には高値であることが多く、さらにリハビリ実施前の分岐鎖アミノ酸(BCAA)の投与や定期的な再評価の重要性など、身体機能回復促進にむけての適切なNST活動が今後重視されるものと思われる。