日本臨床救急医学会雑誌
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症例・事例報告
軽微な受傷機転の腰椎圧迫骨折に合併した脊髄硬膜外血腫
鱶口 清満渡辺 剛史山上 浩
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2016 年 19 巻 5 号 p. 681-685

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抄録

脊椎圧迫骨折は救急外来で遭遇する頻度が高い。その合併症として椎体圧潰による遅発性麻痺を起こすことはよく知られているが,脊髄硬膜外血腫の合併は報告が少ない。今回,軽微な受傷機転で発症した腰椎圧迫骨折で,受傷5時間後に撮影したMRIで脊髄硬膜外血腫を認めた症例を経験した。症例は77歳の女性で,夫と二人でソファを持ち上げた際に腰痛が出現して歩行ができないため救急搬送された。背部に叩打痛,両側腸腰筋以下は筋力低下を認めたが,腰痛のため正確な評価は困難であった。レントゲンで脊椎に明らかな骨折所見を認めなかったためMRIを施行したところ,第1腰椎新鮮圧迫骨折に加え,第10胸椎から第1腰椎にかけて急性硬膜外血腫を認めた。軽微な受傷機転の脊椎圧迫骨折でも脊髄硬膜外血腫を合併することがある。脊椎圧迫骨折において,受傷部位の疼痛以外に神経根に沿う疼痛や麻痺,膀胱直腸障害のような神経症状を伴っている場合は,脊髄硬膜外血腫の合併を疑う必要がある。

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© 2016 日本臨床救急医学会
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