生体医工学
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舌喉頭偏位症(ADEL)啼泣音声の分析
山本 伊佐夫中川 貴美子大平 寛鎌倉 尚史山田 良広長谷川 巖
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2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 232

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抄録

舌喉頭偏位症(ADEL)いわゆる舌癒着症は、舌・喉頭の前上方への偏位により呼吸が抑制され、夜泣き、疳の虫などの症状を呈する。舌小帯およびオトガイ舌筋の一部を切除する舌喉頭矯正術(CGL)により、喉頭は直立し上気道の抵抗が減少するためADEL症状が改善する。

本研究の目的は、育児困難な重度ADEL 児を早期発見し、CGL治療や育児支援等の対策を講じるための基礎技術を開発すべく、CGL前後のADEL患児の啼泣音声を解析し、その違いを明らかにすることである。

向井診療所にCGLを希望し来院した乳児を対象に、CGL前後の啼泣音声を録音し、その音声ファイルからノイズの少ない啼泣音声を切り出した。尚、本研究は神奈川歯科大学研究倫理審査委員会の承認後、親権者の同意を得て行った。解析では、音響特徴量として、感性制御技術(Sensibility Technology:ST)を用いた5種類の感情指標、および音声分析ソフト「Praat」を用いた音質に関する4種類の特徴量を算出した。CGL施術前後で有効な啼泣音声が確認された69名それぞれの乳児ごとに手術前と手術後の各特徴量の平均値をt検定により比較検討した。

結果、いくつかの特徴量に有意な差が認められた。本結果は、舌・喉頭の偏位によって啼泣音声が変化することを示している。今後、正常乳児との音声比較や、より細かな特徴量解析などを行うことによって、ADEL 簡易診断や手術効果の確認に役立つシステムの実現を目指す。

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© 2020 社団法人日本生体医工学会
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