日本口腔インプラント学会誌
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症例報告
認知症患者に生じたインプラント周囲炎を契機とした薬剤関連顎骨壊死の1例
小嶋 一輝木下 一彦鶴迫 伸一勝山 英明
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2024 年 37 巻 1 号 p. 59-63

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抄録

近年,日本は超高齢社会を迎え,認知症などを原因とする要介護者は増加傾向にある.口腔インプラント治療が普及し,長期予後が認められるなかで,要介護者の口腔インプラントの維持・管理が問題となっている.今回我々は,認知症患者に生じた,インプラント周囲炎を契機とした薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)を経験したので報告する.

患者は87歳,女性.既往歴にアルツハイマー型認知症,胸腰椎圧迫骨折,骨粗鬆症があった.右側頬部の腫脹,右側顎下部の疼痛のため当科を受診した.右側頬部に腫脹,顎下部に口腔外瘻孔,排膿を認めた.下顎右側インプラント周囲歯肉に発赤,腫脹,排膿を認めた.CT画像でインプラント体周囲に腐骨分離像,骨硬化像を認めた.インプラント周囲炎,MRONJステージ3と診断し,局所麻酔下にインプラント体除去術と腐骨除去術を行った.術後に再発なく,経過良好である.

今後,口腔インプラント治療歴のある認知症患者および骨粗鬆症患者は増加していくため,インプラント周囲炎およびMRONJの発症予防と発症後の適切な対応が重要となる.

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