日本公衆衛生雑誌
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研究ノート
介護予防対象者の運動器関連指標評価基準 介護予防ケアマネジメントのために
大渕 修一小島 基永三木 明子伊藤 和彦新井 武志辻 一郎大久保 一郎大原 里子杉山 みち子鈴木 隆雄曽根 稔雅安村 誠司
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2010 年 57 巻 11 号 p. 988-995

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抄録

目的 介護予防ケアマネジメントでは,対象者の身体機能レベルを把握し目標設定,効果判定などに活用する必要がある。しかし,特定高齢者および要支援者を対象とした身体機能評価に関する大規模な先行研究は乏しく,明確な判断基準がない。本研究では,運動器関連指標の判断基準を作成することを目的とした。
方法 厚生労働省の介護予防継続的評価支援事業で収集されたデータベースを解析した。このデータベースは沖縄を除く全ての都道府県から83の地域包括支援センターの協力を得て,平成19年 1 月から平成20年12月末までの間に,介護予防ケアプランを作成することとなった者全員を対象に介護予防事業で取り扱われる項目を網羅的に調査したものである。データベースに登録されている9,105人のうち,運動器関連指標の測定が行われている3,852人を対象に,男女別に,特定高齢者と要支援者に分けて求めた 5 分位を用い,機能が低い者がレベル 1,高い者がレベル 5 に分類されるよう基準値を作成した。
結果 各指標の機能レベルは,男性,女性とも,要支援者に比べて特定高齢者で有意に高かった(P<0.01)。片足立ち時間では,特定高齢者と要支援者との間には,最下レベルの区分値に,男女とも 5 分位で 1 段階以上の差があった。Timed Up & Go 時間では,男性特定高齢者の最下レベル 1 の区分値は,男性要支援者のレベル 3 に該当し,女性特定高齢者の最下レベル 1 の区分値は,女性要支援者のレベル 3 に該当した。5 m 通常歩行時間もほぼ同様で,男性特定高齢者の最下レベル 1 の区分値は,男性要支援者ではレベル 3 に該当し,女性特定高齢者の最下レベル 1 の区分値は,女性要支援者のレベル 4 に該当した。
結論 男女とも,特定高齢者と要支援者とでは,運動器関連指標の分布が異なり,とくに移動能力において差が大きいことが明らかになった。地域支援事業の運動器の機能向上プログラムの効果判定には,特定高齢者と要支援者とでは,異なる評価基準を用いる必要がある。

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© 2010 日本公衆衛生学会
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