日本公衆衛生雑誌
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地域における C 型肝炎ウイルス感染者対策(第1報) 90年代の大阪府 A 町での HCV 検診および抗体陽性者の課題
神藤 久壽美元重 あき子串山 京子田中 英夫北内 京子津熊 秀明
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2005 年 52 巻 6 号 p. 486-494

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抄録

目的 住民検診で発見された C 型肝炎ウイルス(HCV)抗体陽性者の,HCVに関する認識や,その後の受診行動,行政に対する要望を調査すること。
方法:大阪府 A 町の検診で発見された HCV 抗体陽性者 5 人ずつの 2 グループを対象に,フォーカスグループインタビューによる定性調査を行った。次に,1991年 4 月~98年 3 月に同町の検診で発見された HCV 抗体陽性者263人を対象に,記名自記式質問票を用いた郵送法による定量調査を行い,68%(180人)の有効回答を得た。
成績 フォーカスグループインタビューから,感染に対する誤った認識を持っている者が少なくないこと,精検時に医師から定期受診の必要性が説明されないと,その後の受診行動が続かないことが確認できた。また,行政に対しては,個別相談会を開くことや,肝臓の専門病院を紹介して欲しいという要望が強いことがわかった。質問票の回答者の精検受診率は66%に止まり,未受診者の未受診理由は,「自覚症状がないから」が最も多かった。インターフェロン療法を受けていたのは回答者の11%であった。行政に対する要望は,「医師による個別相談会の開催」が回答者の18%と最も高かった。
結論 大阪府 A 町の検診で発見された HCV 抗体陽性者をめぐる問題点(誤った感染知識,低い肝炎の知識による低い精検受診率,医療機関での説明不足,精度の低かった検診技法,行政に対する役割)を整理することができた。この調査で判明した実態に基き,A 町では行政,地元医師会,肝臓専門医が連携した C 型肝炎対策のための諸事業が行われることになった。

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© 2005 日本公衆衛生学会
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