2002 年 49 巻 8 号 p. 720-728
健康介入の進歩における到達点とも言えるプライマリ・ヘルス・ケア(PHC)とヘルス・プロモーション(HP)は社会的政治的介入の健康政策として提唱された。両者には多くの共通概念がある一方で相違点も存在する。人口構造と疾病構造のニーズの違いが,PHC の「ヘルス・ケア」と HP の「健康度(ヘルス)を高めること(プロモーション)」の相違点を与える。また社会政治構造の視点から概念形成の歴史を遡ることにより,PHC が「保健医療の知識・技術・制度を社会化もしくは民衆化」するのに対し,HP は「個人およびそれを取り囲む社会を保健化もしくは健康指向化」することの相違が在ることが分かる。昨今の開発途上国では「社会を健康指向化」する HP 的アプローチが需要されてきており,一方先進国でも「保健医療を受益者本位」とする PHC 理念が希求されている。PHC と HP の相違は双方の固有価値を一層高め,途上国と先進国には両者の理念がそれぞれに必要である。