日本公衆衛生雑誌
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新築住宅における室内空気汚染物質濃度の経時的変化について
南 珠恵松本 浩近藤 文雄山田 靖治松村 年郎安藤 正典宮﨑 豊
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2002 年 49 巻 3 号 p. 211-221

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抄録

目的 平成 9 年 1 月に竣工した愛知県内の新築住宅 1 戸におけるホルムアルデヒドの室内,外気濃度,および個人曝露濃度調査,ならびに揮発性有機化合物および二酸化窒素濃度調査を行い,これら化学物質の室内濃度の経時的変化,室内濃度と個人曝露濃度との相関,それに室内濃度と室温,湿度との相関等についても検討を加えた。
方法 ホルムアルデヒド濃度の調査を,平成 9 年 4 月,6 月,8 月,10月および平成10年 2 月に,また,揮発性有機化合物および二酸化窒素濃度の調査を,平成 9 年 8 月と平成10年 2 月の 2 回行った。
成績 平成 9 年 4 月に28日間連続(48時間サンプリングを計14回)して測定した「精密調査」では,ホルムアルデヒドの室内(居間,台所,寝室)濃度は,42回中34回(81.0%)の測定で厚生省が示した「室内濃度指針値」(0.08 ppm)を上回っていた。その後,平成 9 年 6 月,8 月,10月および平成10年 2 月に実施した「経時的調査」では,6 月および 8 月における各部屋 7 回,計21回の測定中20回が「室内濃度指針値」を超え,築 7 か月後まではホルムアルデヒドの室内濃度は高いレベルで推移していた。ホルムアルデヒドの個人曝露濃度も築 7 か月後まで高い値を示していたことから,今回の調査対象となった新築住宅の居住者は,この間高濃度のホルムアルデヒドに曝露されていたものと考えられた。一方,気温,湿度が高い 6 月から 8 月にかけては,室内(居間)のホルムアルデヒド濃度が増加し,「経時的調査」期間中における居間のホルムアルデヒド濃度と室温および相対湿度との間には,それぞれ有意な正の相関(P<0.001)が認められた。また,ホルムアルデヒドの室内濃度が高い場合には,窓の開放による換気により,その濃度を有効に減少させうることが明らかとなった。
揮発性有機化合物のうち,トルエンの室内濃度は築 7 か月後にも外気濃度よりも高い値を示していたが,他の物質は外気とほぼ同じ値を示していた。また,築13か月後にはすべての物質の室内濃度が外気濃度とほぼ同じ値を示し,今回調査を行った揮発性有機化合物は,時間経過とともに速やかに減少することが示された。二酸化窒素濃度については,開放型暖房器具を使用していた 2 月の寝室の濃度が,大気中の環境基準である0.06 ppm を超える値を示した。
結論 今回の調査対象となった住宅の居住者は,高い濃度のホルムアルデヒドおよび二酸化窒素に曝露されていたと推測された。今後,ホルムアルデヒド等化学物質の放散量が少ない建材の使用や,適切な換気の励行および開放型暖房器具の使用をやめるなどの対策を施す必要があると考えられた。

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© 2002 日本公衆衛生学会
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