水産増殖
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有明海におけるワカメ養殖の研究 (1)
ノリ柵を利用したワカメの全浮動養殖について
西川 博
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1963 年 11 巻 3 号 p. 175-186

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抄録

有明海に面する長崎県島原市猛島地先のノリ場でノリ柵を利用してのワカメの全浮動養殖試験を地盤高90cmのところで, 養殖網の最低潮位を100~130cmに調節し, 昼の干潮時には無干出, 夜の干潮時には小潮時の数日を除いて1日あたり平均で2時間46分, 大潮時で1日あたり4時間前後の干出する条件下で試験した結果次のことがわかった。
1) 種苗の発生状況は養殖網に種糸をとりつけてから22日目の1月10日に1株 (種糸6cm, 1本) あたりの平均は179個, 2月にはいると1株あたり40~48個となり成葉体の生長期にはいって急減した。
2) 葉体長の生長は1~2月の1カ月に急速な生長がみられ, 最大葉体長で1月10日に32cm, 1月25日に67cm, 2月7日に110cm, 2月18日に122cmの生長を示した。この生長状況は同一種苗をつかった沖合のいかだ式養殖の生長とくらべて2月上旬まではほとんど生長差はみられなかったが2月上旬以降は経時的に生長差が大きくひらいていった。
3) 間引採取が可能と思われる葉体長で30~40cm級群以上の葉体は2月7日に60.1%, 2月18日に75.3%を示し2月上旬から採取が可能となった。
4) 単位あたり生産量は養殖網1m2で2月7日に2.8kg, 2月12日に3.6kg, 2月18日の取上げ時には3.8kgの生産量であった。ノリ1柵 (2×18m) あたりに換算すると, 2月中~下旬に130~140kg, 養殖期間を3月までとすると180kgの生産量が見込まれた。
5) 企業性について検討した結果, 1柵 (2×18m) あたりの所要資材の経費は約2, 800円で, 2月中~下旬に一斉採取した場合の売上げ高は約15, 000円となり, 収益は労賃別で施設費の約4倍, 設置賃金を入れると約2.5倍となった。また養殖期間を3月までとすると労賃別で施設費の約4.7倍, 労賃を入れると約3.4倍の収益となり十分採算がなりたつ。

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