症例は64歳, 男性。1999年2月下部直腸癌にて低位前方切除術を施行したところ吻合部縫合不全発生の結果, 同部の狭窄を呈した。数ヵ月毎にバルーン拡張術を施行したが, 疲痕狭窄が改善せず悪化傾向を呈するため, 2005年5月経肛門的搬痕切除術を施行した。第1病日より急激なショック, 呼吸不全, disseminated intravascular coagulation (播種性血管内凝固症候群: 以下, DIC) をきたしたため集中治療を開始した。CT上直腸壁外にガス貯留像を認め, 内攻型筋膜炎と診断した。同日, エンドトキシン吸着療法 (PMX-DHP) を施行し全身麻酔下にて後腹膜ドレナージと腹腔内ドレナージを施行した。その後, 外向型筋膜炎の病態へと変化したため壊死組織の除去とドレナージを繰り返し, 各種血液浄化法を駆使することで救命できた。今後, 直腸吻合部狭窄に対し局所処置を施す場合, 直腸壁損傷による筋膜炎発生の危険を十分に予知しなければならない。また, 奇しくも発症した場合, 広範囲なデブリードマンやドレナージとともに, 適時, 各種血液浄化法などを早期導入して集中治療にあたるべきと考えられた。