2003 年 23 巻 7 号 p. 1069-1073
症例は65歳, 男性. 腹部鈍痛を主訴に来院. 既往歴はアルコール性肝硬変. 大腸内視鏡検査にてS状結腸に2型腫瘍を認め, 生検にて高分化腺癌の診断を得て, 高位前方切除術施行. 術後第7病日より経口摂取開始, 第9病日より悪寒, 熱発出現. 血液培養検査にてEnterobacter aerogenesが検出された. 画像, 腹部所見より縫合不全は否定的であ, bacterial translocation (BT) を疑い治療的selective digestive decontamination (SDD) を開始し, 解熱, 軽快退院した. 手術より1ヵ月後腹痛が出現し腸閉塞の診断にて当科入院. 翌日より悪寒40度台の熱発. 腸液, 血液からEnterobacter cloacaeが検出され, SDDを開始したところ, 臨床症状は軽快した. いずれも明確な感染源を認めない腸内細菌による菌血症であり, 原因として肝硬変に伴うBTが強く疑われた.