2023 年 43 巻 3 号 p. 675-678
症例は54歳の男性で,約30年前にも直腸異物で手術歴がある。今回,自ら肛門より筒状の容器を挿入し,抜去困難となったため当院救急外来を受診した。用手的な抜去が困難であったため,全身麻酔下に手術を施行した。直腸異物口側端を起点に直腸が重積し,重積部に小腸が嵌頓していた。嵌頓していた小腸の血流は保たれていたため用手的に引き出し,切除は行わなかった。さらに,直腸前壁を切開し直腸内異物を除去した。異物は直径10cm×高さ10cmの円筒状のプラスチック瓶で底面が切り抜かれており,ここが肛門より口側にむかって挿入されていたため瓶内へ直腸壁が重積し陥入したものと思われた。直腸異物が原因で小腸が嵌頓した症例は非常にまれであり,直腸異物を診察する際には瓶状の異物で筒状になっている場合では口側直腸が重積し小腸嵌頓をきたす可能性を念頭に置き治療法を選択することが肝要と思われた。