日本腹部救急医学会雑誌
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症例報告
腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術後に腹膜閉鎖部の裂隙に小腸が嵌入し腸閉塞をきたした1例
長田 圭司中村 公治郎塩田 哲也松浦 正徒岩﨑 純治
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2021 年 41 巻 5 号 p. 319-323

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抄録

腹腔鏡下ヘルニア修復術(transabdominal preperitoneal repair:以下,TAPP)は低侵襲でヘルニア門の確実な視認が可能であり,近年症例数が増加傾向にある。一方で腹腔内操作を伴わない従来のヘルニア修復術では起こり得ないTAPP特有の合併症が起こりうる。TAPP術後に腹膜縫合閉鎖部の裂隙に小腸が嵌頓し腸閉塞を発症した症例を経験した。症例は82歳男性。右鼠径ヘルニアに対しTAPPを施行した。術後2日目に腸閉塞の診断で緊急手術を施行した。腹腔鏡下に観察すると,腹膜縫合閉鎖部に生じた腹膜の裂隙を通して小腸が膀胱前腔に嵌入し,腸閉塞をきたしていた。腹膜縫合糸を切離し小腸の嵌頓を解除し,腹膜を再縫合閉鎖した。TAPP術後の腹膜縫合閉鎖部裂隙には腸管が嵌入しうるので,腹膜縫合閉鎖に際しては強度をもたせた隙間のない縫合を心がけるとともに,この病態を念頭に術後の観察を行う必要がある。

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© 2021, Japanese Society for Abdominal Emergency Medicine
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