2020 年 40 巻 6 号 p. 719-723
症例は74歳,男性。食思不振と黒色便を主訴に当院救急外来を受診し,上部消化管内視鏡検査で十二指腸球部前壁に易出血性の潰瘍と狭窄を認めた。腹部CTでは胆囊壁が全周性に肥厚し十二指腸球部との境界が不明瞭であり,胆囊癌の十二指腸浸潤を疑った。術前に根治切除の可能性は低いと考え,胃空腸吻合術を施行した。術中胆囊針生検の病理検査では黄色肉芽腫性胆囊炎と診断された。術前には胆囊癌を疑っていたが,結果的には臨床経過からすると良性である黄色肉芽腫性胆囊炎の波及による十二指腸狭窄,潰瘍からの出血と診断した。ときとして黄色肉芽腫性胆囊炎と胆囊癌の鑑別に難渋することはあるが,十二指腸に潰瘍・狭窄をきたすほどの黄色肉芽腫性胆囊炎の報告例はまれであるため報告する。